さいたま市放射線測定結果(2023年11月)

2023年11月に大宮・岩槻・浦和の各支部のまちづくり委員がさいたま市各所の放射線量を測定しました。
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「第12回放射線量測定結果・大宮」
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「第12回放射線量測定結果・岩槻」
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「第12回放射線量測定結果・浦和東」
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「第12回放射線量測定結果・浦和西」
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=第12回さいたま市内放射線量測定を終えて=

さいたま市まちづくり委員会  内田恵津子

2011年3月11日東日本大震災で福島第一原子力発電所が水素爆発を起こしてから12年と9か月になります。12回目の測定にもたくさんの組合員が参加してくださり、その結果は昨年と変わらず落ち着いています。変わらないことが安心につながります。皆様ご苦労様でした。
今年は8月から福島第一原発の敷地内に並べられたタンクの汚染水をALPS(多核種除去装置)で処理し、除去できないトリチウムとその他の残留している微量の放射性物質を含んだ処理水を海水で排出濃度基準の40分の1に薄めて原発から1キロ沖の海に放出し始めました。漁業者や多くの地域で放出反対の意見がありましたが、政府は廃炉を進めるためと言って実行しています。トリチウムは水の仲間だから安心と言われていますが本当ですか?
私たちの疑問に国際環境NGO FoE JapanがQ&Aの形で答えていたので抜粋して載せます。

Q1:「処理水」?「汚染水」?
福島第一原発のサイトでは、燃料デブリの冷却水と原子炉建屋およびタービン建屋内に流入した地下水や雨水が混ざり合うことで発生した汚染水を、ALPSで処理しタンクに貯蔵しています。その量は134万㎥(2023年7月現在)。政府、東電はこの水を「処理水」と呼んでいます。一方でトリチウムやその他の放射性物質が残留しているから「汚染水」と呼ぶ人もいます。政府はALPS処理水の定義を「トリチウム以外の
核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」と言っていますが、放射性物質は残留しています。

Q2:処理水の中には何が含まれているの?
東京電力の発表では、処理水には約780兆ベクレルのトリチウム、それ以外の放射性物質はヨウ素129、ストロンチウム90、ルテニウム106、テクネチウム99、セシウム137、プルトニウム239、炭素14など。
2018年8月の説明公聴会の資料では基準を満たしているデータのみが示されていましたが、共同通信その他のメディアの報道によりトリチウム以外の放射性物質も基準を超えて残留していることが明らかになった。その後の東電の発表により現在タンクにためられている水の7割弱で、トリチウム以外の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍近くになっていることが明らかになりました。東電は海洋放出をする前に二次処理をして放射性核種を基準値以下にするとしています。しかし、タンクに残留する放射性物質の総量が示されておらず、二次処理の結果どのくらい残留するか分かっていません。

Q3:東電はすべてのタンクについて放射性物質を測っている?
東電は「放射線影響評価」を行い、これをもとに政府は処理水の海洋放出の人や環境への影響は無視できるくらい小さいとしています。しかし、東電がソースターム(放出する放射性物質の種類と量)として示しているのは、3つのタンク群(合計3.6万㎥)のみ。タンクの水の3%弱にすぎません。64の放射性物質(ALPS除去対象の62核種、トリチウム、炭素14)のデータがそろっているのはこのタンク群だけなのです。東電は他のタンク群については放出する前に順次30核種を測定するとしています。放出が完了するのには40年以上もかかるとみられますが、それまで待たないと結局、どのような放射性物質が放出されたか分かりません。なお、主要7核種およびトリチウム、炭素14についてはすべてのタンク群でのデータが公開されていますが、タンクごとのばらつきが大きく、前述の3つのタンク群がタンク水全体を代表しているとは言えない状況です。

Q4 トリチウムって何?
水素の同位体である「三重水素」で陽子1個と中性子2個から構成されます。半減期12.32年の放射性物質で、ベータ崩壊をしヘリウムに変わります。放出するエネルギーは小さく、最大で18.6keVでセシウム
137の最大値512keVの30分の1程度です。トリチウムは水の形で自然界にも存在しますが、核実験や原発施設からの放出によって増加しています。

Q5:トリチウムは安全?
トリチウムの影響については専門家でも意見が分かれています。政府は、トリチウムからの放射線は紙1枚でもさえぎることができる、水と同じ性質を持つため人や生物への濃縮は確認されていないなどと安全性を強調しています。
トリチウムが出すベータ線はガンマ線に比べて飛距離が短いのですが、こうした放射性物質が問題になるのは、体内に入った時の影響です。トリチウムが有機化合物の水素と置き換わり、食物を通して人体を構成する物質と置き換わった時には体内に長くとどまり、近くの細胞に影響を与える事、さらにDNAを構成する水素と置き換わった場合には被爆の影響が強くなること、トリチウムがヘリウムに壊変した時にDNAが破損する影響などが指摘されています。

Q6:トリチウムは世界中の原発から排出されているからいい?
ALPS処理水の放出が通常の原発の排水と大きく違う点は、処理されているとはいえ、デブリ(核燃料が溶け落ちたもの)に触れた水の放出だからで、トリチウム以外に様々な放射性物質を含んでいます。
トリチウムは確かに日本の原発からも放出されています。沸騰水型原発(BWR)からは1年間に数百~数兆ベクレル、加圧水型原発(PWR)からは数十兆ベクレル、六ケ所再処理工場が稼働したら桁違いに多くのトリチウムが排出されます。海外の原発からもトリチウムが放出されており、その累積的影響については不明です。

Q7:海に流すしかないのか、大型タンク貯蔵案、モルタル固化案は検討された?
「大型タンク貯蔵案」は石油備蓄などに実績のある、ドーム型屋根、水封ベント付きで10万㎥の大型タンクを建設する案。建設場所は福島第一原発内の7,8号機建設予定地や土捨て場、敷地後背地等を提案
東電はこれに対して、「雨水混入の可能性がある」「破損した場合の漏えい量が大」とデメリットをあげていて政府見解にも使われていますが、大型タンクは石油備蓄などで実績があり、デメリット対策は施されています。
「モルタル固化処分案」はアメリカのサバンナリバー核施設の汚染水処分でも用いられた方法で、汚染水をセメントと砂でモルタル化し半地下の状態で保管する案です。利点としては安定的に保管でき、放射性物質の海洋流出リスクを遮断できます。
これに対して東電、政府は「水和熱が発生し水が蒸発する」といっていますが、原子力市民委員会は「分割固化、水和熱抑制剤投入で容易に対応できる」としています。
海洋放出が最も安く(現段階で少なくても1,200億円以上)、簡単ということで決まりました。技術者や研究者も参加する「原子力市民委員会」(座長・大島堅一龍谷大学教授)のこれらの提案もありましたが、公共の場で提案者を交えて議論されてはいません。

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長い文章を読んでいただきありがとうございました、そしてお疲れ様でした。
ALPS処理水を海洋放出し、東電も環境省もトリチウムの量を測り公表していますが、私たちが心配しているのは、トリチウムはもちろんですがそれ以外に含まれている放射性物質です。これは東電も環境省も調べていません。長い年月に放出された放射性物質は海の底に溜るか、海流にのって太平洋を巡ります。
山からの水をとめることが出来ないうちは延々と処理水を放出しなければなりません。漁業者の皆さんの心配も尽きません。原子力市民委員会は山からの水をとめる方法も提案しています。政府の本気が知りたいです。
一昨年に「放射線量測定を終えて」に書いたいわき市の「たらちね」の皆さんは福島第一原発沖の海洋、福島県沿岸でセシウム137、トリチウム、ストロンチウム90の測定を続けています。処理水の放出前の測定値を把握しておくことがとても大事で、放出後の測定値の変化を記録する大事業を続けています。
下記に測定結果が出ているのでどうぞご覧ください。☘

https://tarachineiwaki.org/radiation/result#kaiyou